ハウス・オブ・グッチ 映画評
グッチはグッチ家が始めたイタリアのブランドであるが、グッチ家が関わったのは三代のみである。
初代の息子二人(二代目)が後を継ぎ(共同経営)、それぞれの一人息子(三代目)がグッチの相続をめぐって問題を起こす。
三代めが美しい女を妻にして娘を産むが、離婚騒動になり、妻は離婚前に夫を殺せば財産が自分のものになると思い、殺し屋を使って夫を殺害する。
犯罪は発覚し妻は投獄され、グッチ家によるグッチの支配は終わる。
物語の筋としては凡庸にさえ思えます。
しかし、この映画が見ていて引き込まれるのは、この話がまさに実話であることが理由です。
(実際の殺害は離婚後であるらしい)
妻の名前は「パトリツィオ・レッジアーニ」。
(演じるのはレディ・ガガ)
私にとって興味深いのはパトリツィオが頼るビーナという占い師です(実在)。
ビーナは、パトリツィオが巨万の富を得ると的中させます。
二人の関係はそこから続きますが、最初はビーナが上から目線でパトリツィオを導きますが、次第に立場が逆転し、パトリツィオはビーナに何とかしろと恫喝を始めます。
ビーナは最初は「邪眼」などの呪いで対応しますが、ついには殺し屋を雇ってパトリツィオの夫を殺害するに至ります。
占い師にとってあまりの上客は危険極まりないということですね。
クライアントの望む未来を作るように要請されてしまう。
このようなモンスタークライアントは実はそれほど珍しい現象ではありません。
私は僧侶という立場で「指導する」という立ち位置を比較的キープしやすいですが、占い師にはこの対応は難しいと思います。
ビーナがどんどん地獄に巻き込まれていくさまが他人事に思えませんでした。
すべてのシーンが豪華で美しく、とくにレディ・ガガの野心的な表情が観客の心をつかみます。
たいした人だ。