映画「ゴジラ−1・0」を見ました。
「誰かが貧乏くじを引くしかない。」
貧乏くじというセリフが二回は出たと思います。
命を賭して私でないものの為に戦う。
その覚悟をある種喜びをもって引き受ける者たちの物語と感じました。
「私でないもの」は卑近では子供や身内でしょうが、そこを離れて大きな物語、「国家」の為に自己を犠牲にするものの尊さを礼賛する物語としてみてしまうと、ゴジラは見間違えると思います。
主人公の敷島は特攻隊員でありながら、職務を放棄して生き残った兵士です。
また、最初に遭遇したゴジラになにもできず大勢のひとを見殺しにしたとして苦しみ続けます。
最後に敷島は「自己を犠牲にすることで、ようやくこの苦しみから解放された」にならないところがこの映画のもっとも重要な肝だと思います。
「学者」の「誰も犠牲にしないことを誇りとしたい」というセリフが重い。
昨今の世の中は「私が幸せでなければ他人を幸せになどできない」という言葉に支配されていると思います。
しかし、
「私の幸せが核になくてはならない」
VS
「誰かが貧乏くじを引かなくてはならない」
の葛藤に、なんとか折り合いを付けようともがく物語と見ました。
注意すべきポイントは
・戦いの場面は全員男性であること。
・国家はほぼ関与してくれないこと。
ですね。
NHK連続テレビ小説「らんまん」の夫婦がそのまま二人パートナーとして登場するのもうれしかった。
音楽が素晴らしいです。
伊福部昭さんの例のテーマも効果的。
最後のエンディングテーマも秀逸でした。