如何にして藤川はこうなったのか⑭
通常は事務処理を効率化するというのがコンピュータの使用目的です
データが入力され、計算処理をして出力する
経理、給与、人事、販売、在庫、等々ほとんどの事務処理の計算部分は四則演算(足し算、掛け算、足し算、引き算)のみです
計算自体は単純なことが多い
大変なのは入力と出力部分
どのようにデータを入力し、見やすくわかりやすい帳票を出力するか
人との接点の部分が一番大変です
そして、そもそもどのようなものを作れば業務が滞りなく進むかのイメージをユーザーが明確に持っていることは稀です
おそらくコンピュータシステムの導入を真剣に考える動機は扱うデータの量の増大です
昨日、今日と私は師匠の金翅鳥院のシステムの「家相札の注文の効率化」のためのACCESSシステムを構築していました
紙を使って一件づつデータを参照しながら入力するのは無理があるほどの注文量があり、システムに組み込んでほしいとの依頼です
たいていの要求は漠然としたものです
コンピュータに仕事をさせるためには厳密に作業内容を定義していく必要があります
これは実はコンピュータの知識ではなく人とのコミュニケーション能力を要求されるところです
根掘り葉掘り作業の内容について聞きとる必要があります
ユーザーにとっても大変つらい作業です
人によってはそのようなことはお前が考えることである!
と丸投げする方もいます
そうなれば独自にその業務内容を理解するしかなくなります
ここは私が鍛えられた部分だと思います
僧侶になって相談者の話を聞くことになるのですが、私の作業はほとんど「何が問題なのか」と「どうなれば問題は解決するか」を明らかにすることです
これは大抵の場合、漠然としています
これを明確にするために話の内容を整理していきます
「結局、それは〇〇ってことですよね」
という共通の認識に至ることができれば問題解決は半分くらい成就していると思います
ご祈祷において、なにを解決するように祈るかを探るためにも欠かせない作業です
ただただ話を聞いてほしいというニーズがあることも承知していますが、時間単位で相談料を頂いているわけではなく、私も(多分師匠も)うんうんとうなずくだけのことはしていません
前にも書きましたが、ずっと電話で気持ちだけを表明し苦しいのです、と繰り返し訴えてくる方に対して「で、私に何をせよというのですか」と返したことがありました
この何をどうすれば問題は解決するかというアプローチは男性がしがちなことですね
ただ、これに耐えられない人はそもそもご祈祷には向いていません
その点病気のご祈祷はこういった作業が少なくて済むので、話は単純になることが多いです
人間関係が絡む相談は勢い大変になりますね
話が複雑で私が全体を理解するのに時間をかける時、それが相談者の癒しにつながることもあるようです
この対話のスキルも私はコンピュータシステムを構築することで学んだことのように思います
大きな神社仏閣のご祈祷のように、祈願の種類をあらかじめ用意しておいて〇をつけてもらいその内容を読み上げることのみでご祈祷とするという方式を上願寺では採用しません
ご祈祷はあくまで個人的な物語を理解したうえでのことです
病気であっても実は方位や星回りや先祖供養の問題と絡める必要も生じます
事前の相談は欠かせないのです
いまハンコの廃止を政府は進めているようですが、目的が「廃止」そのものになると失敗する思います