エヴァンゲリオン
(ちょっとネタバレあり)
観てきました
傑作だと思います
物語は最終の局面で、孤独、情愛、親子、連帯などパーソナルな、ある意味卑小なトピックに収斂していきます
このことをもってこの作品を評価しないという立場があり得るでしょう
私はそう思わない
「あなたを救うことは世界を救うことである」
「あなたを傷つけることは世界を傷つけることである」
このテーマは実に哲学的であり宗教的です
親鸞の次の言葉を思い出しました
「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、ひとへに親鸞一人(いちにん)がためなりけり。されば、それほどの業をもちける身にてありけるを、たすけんとおぼしめしたちける本願のかたじけなさよ」
私の中に世界が内包されているからこそ、御祈祷も成立します
ニーチェの神なきあと、私たちはどのように世界に生まれてきてよいのかという問いにもつながります
理趣分を唱えれば、三界の有情をすべて殺害しても地獄に落ちないという世界観にも似ています
あなたの苦しみは世界の苦しみと等値である、というテーマは簡単には描けないものだと思います
エヴァンゲリオンはそれだけのエネルギーを必要としたのでしょう
碇ゲンドウの言う「差別、嫉妬、貧富の差、戦いのない世界」の象徴として、首のない全く同質の女体が無数に現れます
彼がある癒しを得た後に、その無数の女体が様々な個をもった有情(動物含む)に変化していくさまもお見事だと感じました
敵対する、碇ゲンドウと葛城ミサトがそれぞれの子供に会わないことが互いのためと信じていることが符号しているのもお見事だと思います
伊吹マヤの「これだから若い男は」のセリフが二回出てきますが、そのニュアンスの差も心地よいです
物語の中で男はいつも女々しく、女は勇敢で冷静で激しい
この性差も私には心地よかったです
参考文献
生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ! (筑摩選書) 森岡正博
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これ読んでなかったらエヴァンゲリオン全然わからなかった思います
音楽が素晴らしい!
歌が多用されます
クラシックから昔の歌謡曲から童謡、新作等々、あのセンスの良さは一体?
宇多田ヒカルのテーマ曲も素晴らしい!
必ずしもすんなり入って来ません
非常に美しい現代音楽を聴いているような気になりました